「クラウドワークスだけで月収20万円以上」が111人って、多いと思う
クラウドワークスのIR資料が話題になっています。
夫「クラウドワークスで月20万円以上稼いでる人って、111人なんだって!」
わたし「へ~!多いね!!」
夫「…え?(少ないでしょ)」
わたし「…え??(多いでしょ)」
我が家ではこんなやりとりがあったところから、いろいろ考えてみました。
夫とわたしの反応のちがい
夫は新卒から同じ会社に勤め続けているサラリーマン。
わたしはフリーランス→正社員→パート→正社員というキャリアです。
冒頭の反応の違いは、フリーランスという働き方から考えた、クラウドソーシングが社会に与える価値の認識の違いなのかな、と思っています。
まず、フリーランスという働き方について考える
クラウドソーシングで仕事をする人は、フリーランスとして在宅で仕事を請け負う人、ということになります。
ワーキングマザー(予備軍含む)なら、フリーで働きたい、在宅で働きたい、と考えたことがある方はきっと多いでしょう。
わたしも今は正社員ですが、将来はフリーランスになる可能性も常に考えています(たとえば夫が海外赴任することになったら、赴任先に家族そろって行きたいのです。そうなっても自分のやりたい仕事をするための選択肢のひとつとしてフリーランスを考えています)。
会社というものが基本的に「健康な男性」を中心に作られ、まわっているので、なんらかの事情…怪我や病気をした人、介護や妊娠出産や育児など…で働きづらさを感じる方は、会社員以外の働き方を考えざるを得ないことがあります。
妊娠出産があり、介護や育児の負担も大きくなりがちな「女性」は、会社員以外の働き方について向き合う機会は男性より多いはずです。
フリーランスという働き方は、女性、母、の間でもっと考えていく価値があるものです。
クラウドワークスだけでは食えない=フリーでは食えない、ではない
クラウドワークスで月20万円以上稼いでいる人が111人とのこと。
じゃあそれ以外の人はフリーランスの仕事を本業にはできず、会社員との2足のわらじとか、バイトやパートと組み合わせて食べていってるのでしょうか。
2足のわらじやバイトとの組み合わせも働き方の選択肢なのでいいと思いますが、そういうことをしなくても生計を立てている人はもっといるはずです。というのも、多くのワーカーはランサーズのような他のクラウドソーシングサービスや、フリーランスとしてリアルの繋がりで得た仕事もしているはずだからです。
だから働き方ベースで考えると、クラウドソーシングを活用してフリーランスとして生計を立てている人は111人ではなく、もっといることになります。
「クラウドワークスで月20万円以上稼いでいる人が111人しかいない」だからクラウドソーシングやフリーランスは稼げないしやらないほうがいい、という論調は乱暴すぎます。
冒頭の夫との会話でわたしが「111人」を多いと感じたのは、このような理由からです。自分のフリーランス経験から、仕事はあちこちから受けているはずという前提をもっていたのです。そう考えると、クラウドワークスというたったひとつのプラットフォームだけで生計を立てられる人が「111人」という数字をどう感じますか?
クラウドワークスの利用者が80万人もいるのに、高収入ワーカーは111人しかいない、という割合の低さも問題視されているようです。これについては、80万人ってどの程度アクティブなのかが疑問すぎて、なんとも…。
クラウドワークスのサイトでワーカーを検索してみると、22万人強しかヒットしません。どういう理由かはわかりませんが、80万人がすべて活動しているわけではないのは間違いありません。
クラウドソーシングの仕組み自体がまだまだ新しい未成熟なものであることを考えると、利用者80万人のうちの111人、という割合より、「月収20万円超えワーカーが増え続けている」ことのほうに注目したいです。市場が成長しているわけですから。
「やっぱりフリーでは食えないんだな」ではなく、「フリーで食っていけるんだ」「そういう人が増えていくんだ」という印象のほうが強いです。
だけど、そもそもフリーランスには相当の覚悟が必要
フリーランスで生計を立てるのは大変、現実は厳しい、というのは間違いないと思います。世の中は会社員として働くことが「基本」になっているので、それと違うことをしようとすると、会社員とは違う苦労があります。福利厚生などを考えると容易に想像がつきますよね。
前述したとおり妊娠出産などの理由で会社のルールでは働きにくい人や、会社に属した状態では実現できない野望がある方が、それでもフリーランスを選択するときは、覚悟をもってのことでしょう。
「フリーのほうが稼げるならフリーになる。稼げないなら会社員のほうがいいや」という考え方で、フリーランスでやっていけるのでしょうか?
「より稼げるから」でなく「やりたいことがあるから(野望や、家庭とのバランスをとる…)」がベースでないと、なかなか難しいのではないでしょうか(その結果として、フリーになったほうが稼げることはあっても)。
クラウドソーシングを「ウマい稼ぎ方」のように考えていた場合、今回の発表資料はがっかりするものだったでしょう。やっぱりクラウドソーシングは稼げない、会社員のほうがいいじゃないか…という意見は「どちらが稼げるか」という観点ですが、そうではなく、「働き方の選択」という観点で考えることで、長期的にみてわたしたちにどんな影響がある問題なのかに近づけると思います。
クラウドワークスがIR資料で「働き方革命」という表現をしているように、働き方を変える、選べる、ということが重要で、それが現実的になればなるほど、多様な生き方がしやすくなるはずです。
クラウドソーシングの世界を成熟させなくちゃいけない
高収入ワーカーが少しずつ増えているとはいえ、クラウドソーシングの世界がまだまだ発展途上であることは、あちこちで叩かれているように、労働力を安く買いたたく案件が多いことや、犯罪まがいの仕事を依頼する発注者がいることなどからわかります。
でもこれは既存の何かを変えようとする過程で必ず通るものではないでしょうか。「案件やクライアントの質が悪い」と非難するだけでは進歩はありません。
新しい仕組みを成熟させるのは、そこに関わるすべての人の課題です。
仕組み自体をビジネスにしているプラットフォーム側はもちろん率先して課題を解決する(ルールの見直し、発注者のリテラシーの向上など)責任がありますし、発注者も立場の弱いフリーランスから搾取しようなどという意識では絶対にいけません。
でもワーカーも、新しい仕組みに関わる一員なのですから、課題の解決に参加しなくては変化は進みません。買いたたきと思うならその仕事を受けない。安くても学びなど得るものがあると思うなら受ける。そうやって繰り返していくうちに、文化が、仕組みが、整っていくのだと思います。
ワーキングマザーにとってのクラウドソーシング
そうやってクラウドソーシングの世界が整って、フリー/在宅という働き方に対するサポートが今より強力になり、選択肢が増えていくことは、きっと、ワーキングマザーにとってもプラスです。
保育園に入れなくて復職できず収入がゼロになるのを防げるかもしれない。
お迎えコールからの早退に肩身の狭い思いをしなくてすむかもしれない。
看護休暇や有給の残日数におびえなくてすむかもしれない。
より育てやすい、より働きやすい社会を、夢見ずにはいられません。
フリーランスという働き方、それを支えるクラウドソーシングという仕組みは、時代を変える鍵のひとつだとわたしは思っています。
この鍵は、ワーキングマザーの新しい扉をも開くかもしれないのです。
どんな形であれ、今より多様な働き方ができるようにならない限り、ワーキングマザーは息苦しさを感じ続けることになるでしょう。決してフリーランスを推奨するわけではありませんが、選択肢が増えることがとても重要です。
クラウドソーシングが社会に与える最大の価値は「働き方の選択肢を増やす」ことです。
新しい選択肢でも、従来の選択肢でも、主体的に選びとっていきたいものです。